2022年1月7日、一人乗り漁船が行方不明になっていると報じられました。同6日に新潟県村上市の寝屋漁港を出発した1人乗り漁船「大漁丸」(6.6トン)でした。続報は確認中ですが、1月11日日没を以て捜索打ち切りというふうに聞いています。
小型船の海難事故は年間2,000件以上といわれます。船が破損したり転覆したりしていなければ、位置を特定することで救難の可能性は上がるでしょう。問題は、前掲のような1人乗り漁船で仲間の船と出かけることもなく海の上でひとりぼっちの場合、水上や水中の人の位置を特定することが困難となり、なかなか発見されないという状況を生み出します。
今回、生業として海に出ることが必須な漁船の海難事故防止について、所管の水産庁に話を聞くことができました。
まず、救難に有益なAIS=船舶自動識別装置の導入について。同装置は「船舶の位置・針路・速度等の航行の安全に関する情報を自動的に送受信するシステム」です。フルセットで導入すると24~25万円程度のようですが、2021年度の補助金でこんなものがあります。
70歳以上の漁業者が操船する20トン未満の小型漁船に新品(リース不可)を導入する場合、対象漁船ごとに上限10万円を補助 (2021年度の場合、申請期間は2021年7月1日~8月31日であった。)
しかし、無線設備の搭載が困難な小型の沿岸漁船にはAIS機器の搭載が「現実的江はない」ということで、水産庁は日本無線株式会社に委託してAISアプリの実証実験を実施。少ない予算の中で、小型漁船を守る努力をされています。
また、株式会社AioTクラウドは「海難救援支援ソリューション」を提案しています。想定用途は「沿岸部を航行する船舶事故発生時に、船外に転落した船員の場所を特定し、救援/捜索を行う」というもの。救命胴衣等にビーコン機器を装着し、機器の水没を検知すると位置情報の送信を開始する、という機能が訴求されています。
身体一つでも、装着さえしていれば位置情報を発信できるモバイル端末は最も有望な気がしますが、水没すると電波を出せないこと、現状は携帯通信網から外れると信号を捉えられないなどの課題があります。(携帯通信網から外れても信号を捉えられるシステムについては、水産庁が鹿児島で実験中)
まだまだ開発途上ではありますが、海難事故に遭った場合の救難信号の発信については日に日に進歩している感があります。あとは、いくら救難信号が出せても、それが捕捉されなければ実際の救助にはつながらないことから、その点についての調べはまた宿題にさせていただければと思います。
一人乗り漁船の方々は多分実行されているとは思いますが、今一度基本に立ち返り、海上保安庁の呼びかけを最後にご紹介します。
一人乗り漁船での安全な運航のために(海上保安庁) 〇集団で操業しましょう 単独での操業を避け、 2隻以上での集団操業を心がけましょう 〇気象情報を入手しましょう 〇連絡手段を確保しましょう 無線や携帯電話により定期連絡を行いましょう。 携帯電話は防水パック等に入れ携行し、 常に連絡手段を確保しましょう。 〇海中転落へ備えましょう 漁船に1人で乗船し、漁労作業に従事している場合は、法令により救命胴衣の着用義務があります。(※中略) 万一の海中連絡に備えて、船上に上がるための梯子やロープを設置しましょう。